あんぱん






「……オイ。いい加減機嫌直せっつてるだろ」
「……」
「ああ、そう無視ですか。おお。銀さんを無視するとはイイ度胸じゃねーか?あ
あ?」
 銀さんは溜息交じりで呆れています。
 でもね、やって良いことと悪いことがあるんですよ。コノヤロ。
「もう。新ちゃん。ねえ。機嫌直してよ」
 今度は甘い猫撫で声で、「このとーり」と両手を合わせる。が、許せない。
「……ぼくの…あんぱん…」
 あ、思い出したら泣けてきた。
 鼻がツーンとしてきた。あ、やばい。
 銀さんが僕の顔を見てぎょっとした。
「オ、オイ!! 泣くなよ。あるじゃねーか! ホラ。俺のあんぱんやるから!」
 銀さんはそう言って自分のあんぱんを投げて寄越した。
「ちがう」
 銀さんは僕が朝食にと取って置いたあんぱんを勝手に食べた。
 自分の分があるのに。
「違うって何が?」
「銀さんのはこしあん」
「ハア?」
「僕のは粒あん……」
 小豆のあの食感が好きなのに。銀さんは甘けりゃなんでもいいんだろうけ
ど。僕は、僕は。粒あん派なんだよ。
(考えたらまた泣けてきた)
 眼鏡を取ってゴシゴシ涙を拭く。と、銀さんに両手を掴まれた。
「ダーッ!!そんな乱暴に拭くな!目が腫れる!そして泣くな。買ってくるから」
「…買ってきて下さい」
「お前、意外と執念深いのな」
「悪いか!」
「帰ってくるまでに泣き止んどけよ」
「……ハイ」
「帰ってきてまだ泣いてたら銀さんまで泣いちゃうからな。コノヤロー」
 僕は思わず笑ってしまった。すると、銀さんはホッとしたように表情を緩めた。
 そして、ヘルメットを掴んで出掛けていった。





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