16歳






「銀さんちょっと聞いてくださいよう」
「ああ?なによ」
 ソファーに寝そべる銀さんに泣きついてみる。目を瞑っていた銀さんは、面倒
くさそうに片目だけちらりと開いた。
「神楽ちゃんが僕のこと眼鏡おっさん言うんですよ!!」
 僕は銀さんの着物を掴んで力任せにゆさゆさ揺さぶった。
「ひっぱるなって…ぱっつぁんよう。現実を突きつけて悪いが、実際眼鏡おっさ
んでショ?そうでしょ?」
 銀さんは上体を起こすと、両手を上に挙げて盛大な欠伸をした。
 おいおい。聞き捨てならないお話だよ。天パーじじい!
「眼鏡は認めますよ!でも神楽ちゃんと一歳しか変わらないし!」
 銀さんの胸倉を掴み、僕は訴えた。
「……あれ、オメー何歳だっけ?」
「16だって」
 何故か、銀さんは絶句した。
「忘れてたわ。……お前って子供なのな」
「悪いですか」
「本当に16か?」
「どこをどうみてもピチピチの16歳ですよ!」
「16かー。あー。それはマズイだろう。うん、マズイ。非情にマズイな」
 銀さんは一人ブツブツと呟きながら、僕を見ては溜息を吐いた。
「何がマズイんですか?」
「いやいや。うん。まあ、こっちの都合だから気にすんな」
 銀さんはそう言って、徐に台所へと向うと牛乳を持ってきて、「大きくなれよ」と
僕に手渡した。






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